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20220609 バイオーム観劇噛み締め


上田久美子先生脚本の舞台「バイオーム」を見ました。
バイオーム
あまりにガツンときたので、以下メモ書きを残しておこう。
またいつか見られる日を願って。というか映像を販売してほしい…!!
配信のそのままでいいので!!!
一回の観劇であまりにエネルギー吸い取られたので
配信は見られそうにないので。


起こる事件は言ってしまえばありきたりで先の予想が立つ内容なので、
あらすじを話して魅了を伝えるのは難しい。
生きている価値や意味を求めたがる人間。
すベてをそういうものとして受け入れる植物。
「死ぬのではなく、ただ変わるだけ。」

老いたけもの。(麻実れいさん)
力に踏みにじられた家政婦。
自分を虐げたものの立場に自分の子供がなることに快感。
そのために母性を殺し子供に愛は与えなかった。
高層建築を立てる人たちのその小ささ。
その人たちがいなくなっても残る建築物。
そういうものに生きている意味を見出すも愛を与えられなかった子供は絶望し死に、
孫も死に、屋敷も森も建て壊された。
彼女の人生はそれでは何も起こらなかったのと同じなのか?

庭師けもの。(古川雄大さん)
同じく絶望した彼は家を出て彼女を作って一緒に暮らす。ただ続いていく。

三本脚のけもの。(野添義弘さん)
古くからの黒松がある森に、自分の征服の証として新しい木々を植える。
黒松を盆栽にして征服する。
征服しているつもりで、
地中では全ての木々が黒松の加護を受けていることに気づいているだろうか。
自分自身が小さい鉢に植えられていることには気づいている。
「結局届かなかった。
最初からそう生まれた者の放つオーラが得られることはなかった。
だから自分は総理にはなれなかった。
同じく一般家庭育ちの義息子も同じだ。
だが孫は違う。」

大きなけもの。(成河さん)
生まれ育ちの家柄というコンプレックスを彼もまた持つ。
波に飲み込まれた凡人。そのストレスを解消する場所を外に求めた。
普通であれば優しくいい親だし、異常を見つけられる客観視点も持つ。
しかし大きな波に打ち勝てはしない繊細さもある。
セコイヤはとても高い木になり世の中を見下ろすが、フクロウが止まるのは黒松。
先端は細く弱い。

母親けもの。(花總まりさん)
「人間なんてただ食べてセックスして子供育てるだけ。
不労所得のない人はそこに働かなくちゃいけないから忙しくて考えないだけ」
多くの観劇者がかちんと来るだろう言葉を放つお花様。
なんのために生きているのかわからない。
親の言う通りに結婚し子供を産みまた妊娠を求められる。
自分の希望することはそこに何もない。
持ってる人のはずなのにその当たり前の軽やかさが彼女にはない。
愛を与えられなかったからか。

フラワーセラピスト。(安藤聖さん)
彼女が実は的を射ている。普通の人代表。
盆栽の味は太古の森を思い描く。
そして働かなければ生きていけない。
でも子供がいることがそのエネルギーになる。

るい、そしてイメージナリーフレンドのけい。(中村勘九郎さん)
「お前は家政婦の孫。僕の言うことを聞く」
自分の血脈を知ってるかのような言葉。
あくまで上下関係は変わらない。
”作曲家になる。”
けいが気づかせた、るいの意思。
母親と喋らない寂しい子供に飽きもせず話しかけ続けてくれる相棒。

黒松の子供が花總さんで、
るいと一緒に旅立つのが彼女で、
そこに救いもあるけれど、
「救いかも」と思うのは視聴者の勝手。
踏み潰したのはるいなのだ。
母親を死に導いたのはるいかもしれない。
でも、そこに罪はない。
両者ともただ生き、死んだだけ。
植物は怒らない。
ただ受け入れるだけ。

こちらが何を考えようと朝日は昇り、理由もなく美しく感動する。
殺虫剤に傷ついた植物が待ち望んだ朝。
光が溢れ熱がもたらされることに興奮する。
けれど、誰が何をしたからこの朝が来るわけではない。
関係はない。ただ受け入れるだけ。
それでも美しい。

20220705
(噛み締め絵





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